クライミングはオンサイトが重要

クライミングコラム オンサイトが重要の解説動画です。音声主体ですので、聞き流しでどうぞ。

 

 

 

フリークライミング、ボルダリングをはじめてしばらく経たれた方で、ボルダリングジムなどで仲間が「あの課題は一撃だった」、「あのルートをオンサイトで登った!」とか聞いたことがある人もいると思います。たぶん、最初はオンサイトってなんのこっちゃ?一撃ってそんなに重要なことなの?と疑問を持った方もおられると思います。

 

クライミングの世界でオンサイトで登るということがもっとも栄誉というか、重要視されることです。これは他のスポーツにはあまりない概念なんですよね。

 

他の人の登っている情報とかが全くない状態で、はじめてみた課題、はじめて触れたルールを1回のトライ回数で登るということです。

 

コンペなどでは、他の人の登りが一切見れないようにアイソレーションルームという部屋に隔離されます。他の部屋に隔離しておかないと他の人の登りが見れたならば、後に登った人ほど有利になります。初心者だとそんなに他の人のムーヴとか見ても関係ないと思うし、そんな概念もまだないと思います。ただ上級者になれば、端的に他の人の登りを見られれば、確実に後攻の人が絶対的に有利になります。前に登った人の落ちたムーヴで、このムーヴは確実に間違っていると分かりますし、登ったムーヴも確実に真似して登ってしまいます。

 

そういうふうに後出しじゃんけんみたいになったらコンペが成り立たなくなるので、アイソレーションルームに隔離して、みんな平等に競技するようなシステムになっているのです。

 

さて、オンサイトがクライミングで重要視されるようになったのには、実はすごく歴史があります。

 

クライミングは実は山登りから派生してきているのです。

 

山を登りますと、難しい山、例えば日本でいうと北アルプスの剣岳、槍ヶ岳などは岩場が出てきます。今は鎖場や梯子がありますが、それでも軽くロッククライミングで登らないといけません。

 

そういう難しい山登りでロッククライミングが生まれてきました。そういうロッククライミングで登っていくことは、初めて登るルートで墜落することは、死んでしまうのです。

 

場合によってはハーケンを打ったり、ボルトを設置したりすることもありますが、基本的に本チャンの岩場で、墜落するとほぼほぼ死んでしまいます。または結構な大けがになります。

 

なので、基本的には古典的なロッククライミングでは、墜落イコール死みたいな感じだったのです。

 

確かに私が大学の山岳部でロッククライミングをやっていた時期は、先輩から墜落したら基本的に死ぬよ、みたいに習っていました。

 

ルートによっては40メートルにつきボルト1本とかありましたからね。40メートルでボルト1本だとマックスの墜落距離が40メートルです。ビルの10階建ての上から落っこちるようなものなので、ロープ、その時代はザイルなんて呼んでいましたけど、ほぼほぼ死んじゃいますね。

 

そんな感じの歴史的な背景がありまして、今は別にロープやプロテクション、ボルダリングの場合はクラッシュパッド等がありますので、墜落は日常茶飯事なのですが、オンサイトが重要視されるのです。

 

あと、登山が背景にあるのは、初登頂が登山でよくニュースになります。

 

ネパールの〇〇ピーク初登頂とかニュースになります。未踏峰を登る、未踏の岩壁を初登するというのが、登山界では大変名誉なことです。

 

難しいルートでも第2登、第3登は重要度が下がります。というのは、第2登だと前に登った人の情報で、この辺が難しいとかそれ以外はさほど難しくないなど情報が分かるのです。これを知っているだけで、2番目以降の人は楽なんですよね。

 

その先に何が待っているか分からない初登頂の人は、ものすごく大変なんですね。2番目以降の人は、そのルートは人が行けるルートだと知っているだけでも有利なんですよ。そういうのが登山ではとても大切にされています。

 

そういう名残というか、外岩でもボルダリングの課題を初登したとかいうのがニュースになります。超難しいルートのオンサイトというのもニュースになります。昔、登山から派生したという名残が残っていると思います。その辺も踏まえてボルダリング、フリークライミングを楽しんで頂ければと思います。