開拓系クライマー

開拓系クライマーについて語った動画です。音声主体ですので、聞き流しでどうぞ。

 

 

 

 

 

フリークライミング・ボルダリングをされる人たちの中で開拓系クライマーという人たちがいることを知っていますか?外岩つまり野外の岩場を探して、整備して登ってグレードとルート名・課題名を付けクライミング雑誌やWebページ等に発表する人たちのことです。

 

自分もほんのちょっとだけ開拓をしたこともありますが、教えてくれた先生や友人が開拓をやる人たちでしたので、その辺のお話を一度させていただきたいと思います。

 

よく一緒に登った先生が、開拓系のクライマーでした。アルパイン系のクライミングをされていた方で、のちにフリークライミングのルート開拓もしていました。

 

まず、開拓の第一作業は、岩を見つけるということです。

 

開拓系クライマーというのは、独自の情報網を持っています。まず手つかずの岩を見つけるということが狭い日本では非常に難しいです。自分で野山に入り、林道奥地まで車で入ってさらに獣道などを歩いて岩を捜索します。

 

今ならGoogleマップやドローンなどもばんばん使えるでしょう。20年以上前の話なので、そんな便利な機器はありません。基本的に歩いて、時にはヤブ漕ぎまでして探します。GPSなどもないので、国土地理院の2万5千分の1の地図と方位磁石(コンパスと呼んでいました)で自分のいる位置を特定するしかありません。

 

ベテランの先生だったので、2万5千図などなくてもどんどんヤブ漕ぎして、進みます。当時60歳くらいの先生でしたが、じゃんじゃん道なき道を進みますが、実は道があるっぽいのです。その先生が「ここが第一分岐ですね」とか言っていましたが、大学1年の頃には、その分岐も何も分かりませんでした。大学4年くらいになったら、自分も野生の勘みたいなものがでてきて、分かるようになりましたけども、ほぼ踏み跡程度の道でした。

 

とりあえず、岩を探したら、岩の上部や下部から岩を調査します。

 

次に重要な作業が、岩場の土地の持ち主を探すという作業です。これが超難しいです。基本的には、私有地であることが多いのですが、山林というのは、現在のところほぼほぼ価値がなく、相続が所定の手続きでなされていなかったりします。町役場などに問い合わせたりもして、地籍図といって固定資産税を徴収するための資料等から特定してもらったりもします。この作業がとても大変で、上手く持ち主が特定できたら、持ち主の方に挨拶に行き、登らせてもらえるように許可を得ることが重要です。

 

この持ち主さんとの交渉が上手くいかずに登れなくなる岩場も多数あるそうです。基本的には無価値な山林が多いのです。特に岩場の部分はほぼ利用価値がありません。しかし、、綺麗に植林されている山林だとそれなりに杉、ヒノキなどの樹木に他人が触れて欲しくないと持ち主さんが思われていたりすることもあり、大変な交渉になる場合もあるそうです。

 

なんとか持ち主さんの許可がでたら、開拓作業に進みます。

 

私の住んでいた南九州だと岩というものは、基本的にヤブに覆われています。岩にヤブがついていて、コケが生えている場合がほとんどです。土木作業をせずに登れるという場合は、ほとんどありません。

 

まず、岩の上に生えている木にロープを張り、上から懸垂下降して降りながら作業します。教えてくれた先生は、ユマールと呼ばれるアッセンダーとエイトカンで作業していましたが、今どきの人はグリグリという便利な器具があって、それで登り降りしていました。

 

何はともあれ、1日ロープにぶら下がって、コケはがしをしなければなりません。スコップ、ピッケルを改造した泥落としの金具、浮いた岩を剥がすためのドライバー、コケを落とすためのワイヤーブラシなど工具を使って岩場整備をしていました。

 

泥を落とした後で1~2回ほど雨が降ると綺麗に泥が落ちて登りやすくなります。

 

トップロープでルートを試登して、適切な場所にボルトを打ちます。ボルトは手打ちもできますが、充電式のドリルで穴をあけて設置していました。ボルトは一式で1000円前後していたと思いますが、基本的には開拓者の自腹です。結構な本数を打てば、かなりの出費になります。

 

ボルトを打って、リードで登れば、とりあえずルート完成で、初登者にルート名を命名する権利があるそうです。たくさんルートづくりをされていた先生だったので、ルート名の命名は若干面倒くさそうな感じでもありました。好きな焼酎の銘柄とか適当に付けていました。500本もルートを作れば、付ける名前のネタも切れてくるそうです。

 

20年以上前でしたら、それほどWebページも発達していなかったので、基本的には山岳雑誌に投稿してルート名、グレードを発表してクライマーに岩場として認められる感じです。今はインターネットが発達していますので、ホームページやSNSなどで発表すれば、クライマーに新ルートとして認識されるでしょう。

 

あと、ボルダリングの岩場の場合には、お披露目コンペみたいな行事をするようなこともありました。

 

結構な時間と費用をかけて、開拓系クライマーは日々岩を探して、岩場を掃除しております。基本的には無償奉仕でされておりますので、そういう方に岩場でお会いしましたら、挨拶をしてお礼を言いましょう!やっぱり一番開拓系クライマーがうれしいのは、その方が初登した課題やルートが褒められることではないでしょうか。登ったルートや課題が素敵だったらSNSなどで褒めるようにしましょう!