クライミングホールドの設置方法について語ってみました。基本的に音声だけです。
クライミングホールドの取り付け方には、大まかに2種類あります。
ボルトで固定するタイプ(ボルトオンホールド)
木ネジで固定するタイプ(スクリューオンホールド)
ボルトオンホールドがボルダリングジム等で、一番使われるタイプのホールドになります。M10径のボルトで固定します。M10径とは直径が10ミリの口径のボルトという意味です。
設置が素早くでき、取り外しも素早くできる特徴があります。
基本的にはパネルにM10径に対応した爪付きナットが埋設されていることが前提になります。パネルを固定した場合には、壁の裏側に入れないことが多く、施工後に爪付きナットの設置が困難なことが多いです。事前にパネルに爪付きナットを埋設しておきましょう。
なお、ボルトのピッチ(ネジ山とネジ山の間)が日本の場合はミリネジで切ってあるものを使ってください。
アメリカ等の外国産のホールドに付属しているボルトには稀にインチネジといって、日本で使われているミリネジと互換性がないボルトや爪付きナットが付属している場合がありますので、注意しましょう。
爪付きナットもM10に対応してものを必ず買ってください。
取り付け方は、商業ジムの場合はインパクトドライバーで締め付けます。
インパクトドライバーで締め付ける場合は、締めすぎに注意してください。ホールドがかなりの確率で割れてしまいます。
ホールドが割れるのを防ぐには最後は手回しのレンチで締めると割れる可能性が低くなります。最初の頃は、手回しレンチを使ったほうがホールドが割れなくてよいでしょう。
木ネジで固定するタイプのホールドは、スクリューオンタイプのホールドです。
このスクリューオンタイプは、爪付きナットの設置されていない場所にも自由にホールドが取り付けられるのが特徴です。
基本的には小さめのホールドがスクリューオンタイプのホールドになることが多いです。(逆に相当巨大なFRPのハリボテ、木製のハリボテ等も木ネジ固定が多いです)
中くらいのホールドに木ネジ固定タイプが少ないのには、理由があります。それは木ネジは、ボルトに比べて細いため1本あたりの支持力が弱いです。ジャグ系のかかりのよいホールドをスクリューオンタイプにした場合は、クライマーの握る力が「てこの原理」になり、ホールドを引き抜く方向に働いてしまうことがあり大変危険です。そのため中くらいのホールド(Mサイズ、Lサイズ)には、スクリューオンタイプのホールドが少ないです。
あと、ボルダリングジムでスクリューオンタイプのホールドがあまり使われないのは、ボルトオンタイプは基本的に1個のホールドに1本のボルトで固定します。1回のインパクトドライバーの作業で済みますが、スクリューオンタイプのホールドの場合には、3~5本ほど木ネジを打ち込む必要があります。
商業ジムの場合には、1回のホールド替えで1日あたり1000個近いホールドを設置することもあります。1回あたり3回の作業量の差でも1000個重なると作業時間に大きな差がでます。そのため、基本的にボルトオンのホールドが好まれる傾向があります。
ホールドを設置した後に、回り止めビスを打つようにしてください。
これは、ボルトオンのホールドに回り止め穴が空いている場合には、そこに木ネジを打ち込みます。
基本的には、回り止め穴は自分であけるようになっております。ドリル等で下穴をあけ、ビスの頭が隠れるように大きめのドリルで表面を削ります。
どうしても回り止め用の穴がないホールドの場合には、ホールドの下部の縁に2本、木ネジを浅打ちします。そうすることにより、ボルトが緩んでホールドが動いたときに木ネジの頭にホールドの縁が当たって回転を抑えます。ただ、ホールドの縁の部分に木ネジの頭が食い込むためにホールドが傷みやすいです。できれば、回り止めの穴があったほうが、長い目で見るとホールドのダメージが少ないように思います。
↑爪付きナットとボルトの買い方について語ってみました
ホールドを購入する場合には、ボルトを同時に購入しなければなりません。
前述のとおり径については、M10タイプを選んでください。
キャップスクリュータイプ、M10、ミリネジのものを選ぶ必要があります。
表面の処理については、素地は錆びやすいので避けたほうがよいです。
黒酸化被膜をうちでは使っていますが、湿気が多い場所だと錆びます。おすすめはユニクロメッキです。少し黒酸化被膜より高くなりますが、圧倒的に錆びにくくなります。室内であれば、これで十分だろうと思います。
屋外で使用ですと、かなり値段が高くなりますが、ステンレスを使ったほうがよいと思います。
ボルトの長さについては、40~50ミリ程度のものをよく使います。
しっかり爪付きナットまで届く、余裕のある長さのものを選びましょう。
30ミリ、40ミリ、50ミリ、70ミリ、100ミリ、120ミリ、140ミリ、160ミリ、180ミリを使っていました。
100ミリ以上はかなり大きめのホールドになりますので、一般家庭のプライベートウォールで使われるのは稀かもしれません。
最後に全ネジと半ネジについてです。
全ネジ、半ネジとはネジ山が切ってある範囲のことです。全ネジはボルトの全体にネジ山が切ってあります。基本的に予算があれば、全ネジを買っておけば問題はないです。長ささえ足りていれば、全ネジはオールマイティに使えます。
半ネジは、ボルトの半分程度しかネジ山が切ってありません。ネジ山がある部分以外で、爪付きナットに締め付けようとしてもネジが回らなくなってしまいます。かなりシビアにボルトのサイズ合わせが必要になります。
ただし、全ネジは半ネジの倍以上の価格になります。ここが悩ましい問題で、サイズだけ合ってしまえば、固定するという目的は、全ネジも半ネジも同じなのです。100ミリ以上のボルトはとても高価で、商業ジムの場合には何百本も揃えます。全ネジを使うか、半ネジを使うかで予算が何万円も変わってきます。うちの場合は、貧乏だったので、半ネジを使うことが多かったですが、予算があれば全ネジを買っておけば間違いないと思います。